運営委員長ご挨拶

岡 志郎

早期胃癌研究会運営委員長に就任して

  • 早期胃癌研究会
  • 運営委員長 岡 志郎
  • 広島大学大学院医系科学研究科 消化器内科学

このたび、早期胃癌研究会の運営委員長を拝命いたしました広島大学大学院医系科学研究科消化器内科学の岡 志郎です。まず最初に、これまで長年にわたり本研究会の発展にご尽力されてこられた歴代の運営委員長、運営幹事、運営委員ならびに関係各位のご功績に深甚なる敬意を表しますとともに、日頃より研究会の活動を支えてくださっているEAファーマ株式会社の皆様に心より御礼申し上げます。長い歴史と伝統を有する本研究会の運営に携わることとなり、その責務の重さに身の引き締まる思いでございます。

本研究会は、消化器癌の中でも当時の主要な研究テーマであった早期胃癌の診断能向上を目指し、1960年に「初期癌研究会」として発足いたしました。その後、1964年より「早期胃癌研究会」へと名称を変更し、現在に至るまで我が国における早期胃癌診療の発展に大きく寄与してまいりました。発足当初より、エーザイ株式会社(2016年4月よりEAファーマ株式会社)、財団法人早期胃癌健診協会(現・公益財団法人早期胃癌検診協会)、株式会社医学書院の多大なるご協力のもと、本研究会の機関誌である「胃と腸」誌の編集委員会がその運営に携わり、学術的議論の場として本研究会を支えてきました。さらに2003年には新たな運営委員会が組織され、研究会の運営体制が整備されました。新体制のもとで運営委員長は、初代の多田正大先生をはじめ、第2代浜田勉先生、第3代斉藤裕輔先生、第4代小山恒男先生、第5代山野泰穂先生、第6代江崎幹宏先生へと引き継がれ、本研究会の発展に大きく貢献されてきました。

このように運営体制は時代とともに変化してきましたが、本研究会の根幹をなす理念は一貫しております。すなわち、臨床画像所見と病理組織所見を丹念に対比しながら徹底した討論を行い、真の消化管診断学を追求するという姿勢であります。画像と病理の対比を基盤とした厳密な議論は、本研究会の大きな特徴であり、他の研究会とは一線を画する伝統として現在に至るまで受け継がれてきました。この学術的姿勢こそが、わが国の消化管診断学の発展を支えてきた重要な基盤であることは疑いありません。

本邦における消化管疾患診療は、内視鏡の進歩とともに世界を先導する形で発展してまいりました。高精細内視鏡、拡大内視鏡、画像強調観察などの技術革新により、粘膜表層の微細構造や血管像の精緻な評価が可能となり、特に早期消化管癌の質的診断の精度は飛躍的に向上しました。また、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)の確立と普及は、外科的切除に匹敵する根治性を保ちながら低侵襲な治療を実現し、多くの患者の予後の改善と生活の質の向上に大きく寄与しております。こうした進歩の背景には、日常診療の現場で積み重ねられてきた臨床経験に加え、本研究会のような学術的議論の場における知見の共有と検討が大きく寄与してきたものと考えております。

一方で、消化管疾患診療、特に早期消化管癌を取り巻く環境は現在もなお変化を続けております。より微細な病変の拾い上げと診断精度のさらなる向上、内視鏡治療の適応に関する科学的根拠の深化、さらには地域や施設間における医療水準の均てん化など、私たちが取り組むべき課題は少なくありません。また近年では、人工知能(AI)を活用した内視鏡診断支援技術の進歩などにより、消化管診断学は新たな時代を迎えつつあります。こうした新しい潮流を的確に取り入れながらも、本研究会が長年培ってきた「臨床画像所見と病理組織所見の対比に基づく徹底した討論」という学術的伝統は、今後も大切に継承されるべきものであります。

創設から60年以上にわたり培われてきた本研究会の学術的伝統を礎とし、次の時代の消化管診断学を担う研究会として、若手医師の育成、施設間の連携の強化、さらには新しい技術や知見の積極的な導入を通じて、学術的議論のさらなる深化を図っていくことが重要であると考えております。また、本研究会で蓄積されてきた臨床経験と学術的成果を国内外へ広く発信し、国際的な学術交流を通じて世界の消化管診断学の発展にも寄与していくことが期待されます。

微力ではございますが、運営委員長として本研究会の理念と伝統を尊重しながら、研究会のさらなる発展に尽力してまいる所存でございます。そして、消化管診療の進歩を通じて患者様により良い医療を提供し続けることができるよう、学術活動の一層の充実を図ってまいりたいと存じます。

皆様におかれましては、今後とも本研究会の活動に対し、変わらぬご指導とご支援を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。

2026年4月吉日
早期胃癌研究会運営委員長
岡 志郎