運営委員長ご挨拶

江﨑 幹宏

早期胃癌研究会運営委員長に就任して

  • 早期胃癌研究会
  • 運営委員長 江﨑 幹宏
  • 佐賀大学医学部内科学講座消化器内科

2021年4月より第6代運営委員長に就任致しました佐賀大学医学部内科学講座消化器内科の江﨑幹宏です。

就任にあたりご挨拶申し上げます。

本研究会は消化器癌の中でも当時の主要テーマであった早期胃癌の診断能向上を目指し「初期癌研究会」として1960年に発足し、1964年より「早期胃癌研究会」に名称を変更し現在に至っています。エーザイ株式会社(2016年4月からEAファーマ株式会社)、財団法人早期胃癌健診協会(現、公益財団法人早期胃癌検診協会)、株式会社医学書院の多大なるご協力のもと、本研究会の機関誌である「胃と腸」誌の編集委員会がその運営に携わっていましたが、2003年より新たな運営委員会が組織されました。新たな体制のもと、運営委員長は初代の多田正大先生から、第2代浜田勉先生、第3代斉藤裕輔先生、第4代小山恒男先生、第5代山野泰穂先生と引き継がれてきました。ただし、運営体制が変わっても一貫して本研究会の目的は、臨床画像所見と病理組織所見を対比し徹底的に討論することにより真の消化管診断学を追求することであり、他とは一線を画した伝統ある研究会であることは皆様もご承知の通りです。

私にとりましても早期胃癌研究会は他の研究会とは明らかに異なる位置付けでした。なぜなら、私の母教室である九州大学病態機能内科学(旧第2内科)消化器研究室は消化管疾患の形態診断に厳しい研究室であり、多数例の詳細な臨床病理学的検討に基づいた消化管診断に関する知識が根付いており、それは長い伝統と重みを感じさせるものでした。これらの卓越した消化管診断学を有する諸先輩方の早期胃癌研究会や「胃と腸」誌に対する思い入れは強く、私自身本研究会で発表あるいは読影する際の緊張感は大袈裟かもしれませんが張り詰めた糸のようといっても過言ではありませんでした。ただ、そのような高い緊張感の中で習得した知識は私の消化管診断学の礎となったことはいうまでもありません。この度、本研究会の運営委員長を拝命させていただく栄誉を得ましたが、これも偏に本研究会の運営・発展における諸先輩方の多大なる貢献の賜物であり、その重責を改めて感じています。

さて、近年の内視鏡機器の進歩が消化管画像診断学の発展にもたらした功績は目を見張るものがあります。とりわけ、消化管腫瘍の質的診断において画像強調内視鏡や拡大・超拡大内視鏡により得られる画像情報は必要不可欠なものとなっています。一方、従来から用いられてきたX線造影検査や通常内視鏡検査なども診断に必要な多くの画像情報を得ることができます。拡大内視鏡所見のみに注目するあまり、全体像の観察を蔑ろにした「木を見て森を見ず」の診断手順では正しい消化管診断能を身に付けることはできません。様々な角度から得られた画像情報を適切に集約し、筋道の通った画像診断の実践を心がけることが大切です。そして、免疫組織化学染色や遺伝子学的解析も加味した詳細な病理組織診断を元に、画像情報を改めて見返し所見の成り立ちを理解していくことで、消化管画像診断の応用力を養うことができると思います。本研究会はこのような画像診断の作法や応用力を身につけるための貴重な場であり、今後もそのような学習の場であり続けたいと考えています。

諸般の情勢から、近年は現地開催の規模も縮小傾向にあったところに昨年からのCOVID-19感染拡大の影響を受け現地開催も困難となり、山野泰穂前運営委員長を中心に本研究会のあり方が模索されてきました。しかし、WEB開催は回を重ねるごとに視聴者数は増加し、2021年3月の例会は1700名を超える視聴者を得ることができました。この結果はまさに消化管疾患に携わる先生方の本研究会への期待の表れだと考えています。このような状況であるからこそ、会発足当時の先人たちの熱き情熱を思い起こしながら、運営委員一同、本研究会の発展のために努力していきたいと思います。先生方の積極的なご参加とご支援をお願いして、就任の挨拶とさせていただきます。

今後とも何卒よろしくお願いいたします。

2021年4月吉日
早期胃癌研究会運営委員長
江﨑 幹宏