開催記録

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「第21回臨床消化器病研究会」

日時

2021年11月28日(日)8:45 〜 15:50

参加費 1,000円
プログラム プログラム

消化管の部

主題1 「消化管癌(形態学):上部消化管」

テーマ:十二指腸腫瘍性病変
司会:
後藤田 卓志(日本大学医学部 内科学系消化器肝臓内科学)
藤城 光弘(東京大学大学院医学系研究科 消化器内科学)
病理コメンテーター:
八尾 隆史(順天堂大学大学院医学研究科 人体病理病態学)
 【基調講演】

「病理学的視点から見た、十二指腸腫瘍性病変、腫瘍様病変の鑑別」

順天堂大学大学院医学研究科 人体病理病態学 八尾 隆史

 症例検討【症例提示】

1)慶應義塾大学病院 腫瘍センター 中山 敦史

2)岐阜県総合医療センター 消化器内科 山崎健路

3)順天堂大学医学部 消化器内科学 赤澤 陽一

 【読影者】

1)順天堂大学医学部 消化器内科学 上山 浩也

2)国家公務員共済組合連合会虎の門病院 消化器内科 菊池 大輔

3)岩手医科大学 消化器内科消化管分野 鳥谷 洋右

主題のねらい

2020 年の保険改定で、十二指腸 LECS が新たに保険収載され、十二指腸 ESD が胃から分離し増点された。また、2021 年度中には胃癌学会、肝胆膵学会が主体となり、十二指腸癌診療ガイドラインが発行予定である。しかし、未だ十二指腸腫瘍性病変の発生要因や自然経過、治療介入と予後への影響、などは明らかになっていない。また、内視鏡による癌、非癌の鑑別や癌の深達度診断の方法論は確立しているとは言えず、各種治療法の適応条件も定まっていない。本主題では、基調講演に引き続き、十二指腸腫瘍性病変の病態理解に資する症例提示を元に、十二指腸腫瘍性病変の本質に迫り、最適な内視鏡診断法および各種治療法の適応について議論してみたい。ただし、FAP 関連と乳頭部腫瘍は除く。

主題2 「消化管癌(形態学)下部消化管」

テーマ:「狭窄をきたす小腸・大腸疾患
司会:
田中 信治(広島大学大学院 医系科学研究科 内視鏡医学)
大宮 直木(藤田医科大学 先端光学診療学講座)
病理コメンテーター:
二村 聡(福岡大学筑紫病院 病理部・病理診断科)
 【基調講演】

「狭窄をきたす小腸・大腸疾患」

(小腸) 松山赤十字病院 胃腸センター 蔵原 晃一

(大腸) 市立旭川病院 消化器病センター 斉藤 裕輔

 症例検討【症例提示】

1)藤田医科大学 消化器内科 小山 恵司

2)広島大学病院 内視鏡診療科 山下 賢

3)藤田医科大学 先端光学診療学講座 大宮 直木

 【読影者】

1)広島大学病院 消化器・代謝内科 岡 志郎

2)北摂総合病院 消化器内科 佐野村 誠

3)自治医科大学 内科学講座 消化器内科学部門 矢野 智則

主題のねらい

日常診療で、小腸や大腸に狭窄が生じ腸閉塞を来す症例に数多く遭遇する。その原因として小腸では癒着性イレウス、大腸では進行癌が多いが、他に憩室炎、クローン病を含めた炎症性腸疾患、腸間膜脂肪織炎、虚血性腸炎、腸性子宮内膜症、原発性上皮性・非上皮性腫瘍、他臓器腫瘍の転移・浸潤・播種などでも狭窄を来す場合がある。狭窄の診断は腹部 CT、内視鏡、消化管造影等で行うが、狭窄を来しているため病変の全貌が観察できず、また生検を行っても偽陰性となり、診断や治療に難渋する場合がある。そこで、本セッションでは基調講演と症例検討を通じて、小腸・大腸の狭窄病変の鑑別診断を学ぶ場にしたいと考える。多くの症例(できれば生検や切除標本にて病理組織学的検索が行われた症例)応募を期待する。

主題3 「機能」

テーマ:食道アカラシアにおける診断・治療の最前線
司会:
眞部 紀明(川崎医科大学 検査診断学(内視鏡・超音波)
講演1「食道アカラシアの最新の診断-食道癌との関連性も含めて-」:
栗林 志行(群馬大学大学院医学系研究科 消化器・肝臓内科学)
講演2食道アカラシアの最新の治療- POEM 10 年の治療成績 -」:
塩飽 洋生(福岡大学医学部 消化器外科)
主題のねらい

食道運動障害の一つである食道アカラシアは、食道平滑筋部にある壁内のアウエルバッハ神経叢内の節細胞の変性による下部食道括約部の弛緩不全と食道体部の蠕動波の消失がその病態である。食道アカラシアは良性疾患であるが、罹病期間の長い症例の中には食道癌を合併する症例も認められる。また、悪性腫瘍の中には同疾患と鑑別を要する偽性アカラシア症例もあり、臨床上その対応が極めて重要である。食道アカラシアの根本的な原因は未だに明らかになっていないものの、近年食道平滑筋部の好酸球浸潤との関連性を示唆する報告もあり話題が尽きない。食道アカラシアの診断・治療は高解像度食道内圧検査[High resolution manometry: HRM)の登場や Peroralendoscopic myotomy (POEM)]の開発等により、ここ数年間で確実に進歩しており、本邦からも多くの病態・治療に関する研究報告がなされている。本日は食道アカラシアの診断・治療の最前線と題して、お二人のエキスパートの先生に知っておくべき基本事項を含めて最新の知見についてご講演頂く。

主題4 「炎症性腸疾患(IBD)」

テーマ:H. pylori 未感染胃底腺粘膜の病変
司会:
仲瀬 裕志(札幌医科大学医学部 消化器内科学講座)
久松 理一(杏林大学医学部 消化器内科学)
病理コメンテーター::
九嶋 亮治(滋賀医科大学 病理学講座)
 【基調講演】

「MEFV遺伝子関連腸炎-ALL JAPAN の臨床データから見えてきたもの」

札幌医科大学医学部 消化器内科学講座 仲瀬 裕志

 症例検討【症例提示】

1)佐賀大学医学部 内科学講座 消化器内科学(大腸) 鶴岡 ななえ

2)兵庫医科大学 炎症性腸疾患センター 内科(小腸) 高嶋 祐介

 【コメンテーター】】

1)京都大学大学院医学研究科 消化器内科学 本澤 有介

主題のねらい

家族性地中海熱は遺伝性周期熱症候群の 1 つで、周期性発熱と漿膜炎を特徴とする遺伝性炎症性疾患(責任遺伝子は familial Mediterranean fever gene:以下 MEFV 遺伝子)である。近年、MEFV 遺伝子変異を有し、コルヒチンに反応する腸炎報告例が増加傾向にある(MEFV 遺伝子関連腸炎)。MEFV 遺伝子関連腸炎の内視鏡所見に関しては、潰瘍性大腸炎類似病変 (Saito D, et al. Digestion. 2020)やクローン病で観察される縦走潰瘍 (Asakura K, et al.Medicine. 2018)や狭窄病変などその報告は多岐にわたる。しかしながら、MEFV 遺伝子関連腸炎に関する臨床情報はまだまだ限られている。本セッションでは各施設から MEFV 遺伝子関連腸炎症例を提示していただき、本疾患に特徴的な臨床症状・内視鏡および病理組織所見に関する議論を行い、その理解を深めていきたい。

肝胆膵の部

主題1 肝:「診断に苦慮した肝内胆管癌と類似病変」

司会:
吉満 研吾(福岡大学医学部 放射線医学教室)
波多野 悦朗(京都大学大学院医学研究科 肝胆膵・移植外科学/小児外科)
病理コメンテーター:
中島 収(久留米大学病院 臨床検査部)
 基調講演 「肝嚢胞性病変の鑑別」

「診断に苦慮した肝内胆管癌と類似病変」

佐賀大学医学部 病因病態科学 診断病理学分野 相島 慎一

 症例検討

1)細胆管細胞癌と類似した低分化肝内胆管癌の1例
   福岡大学医学部 放射線医学教室 佐藤圭亮

2)肝細胞癌と合併し、腫瘤内に細胆管癌と胆管細胞腺腫が混在した1例
   久留米大学病院 病理学講座 三原勇太郎

3)CTにて長期経過が確認できた腫瘤形成性肝内胆管癌の4例
   金沢大学附属病院 放射線科 北 川 泰 地

4)鑑別に苦慮した肝サルコイドーシスの1例
   久留米大学病院病理診断科・病理部 内藤嘉紀

主題のねらい

2019年の WHO 分類において、肝内胆管癌の分類が大きく刷新された。これは、主に日本発の研究の積み重ねにより、肝内胆管癌が分子病理学的背景を基に、発生学的、臨床病理学的、また放射線画像的にも大きく異なる 2 群、即ち large duct type と small duct type に分けられることが判明してきたことを受け、それを公式に WHO として採用したものである。本セッションでは、本分野に一環して取り組んで来られた佐賀大学病理学相島慎一先生にこの新分 類の概要と典型例をお示し頂いた後に、非典型例や、鑑別すべき他疾患例を俯瞰することで、この新分類を理解し整理することを目的に企画した。術前十分に検索されたうえで切除され病理学的に証明された、@新分類に基づいても尚診断に苦慮した肝内胆管癌症例や、Aいずれかの群に類似した臨床画像的特徴を示しながらも肝内胆管癌では無かった症例、を広く公募するので、奮って応募頂きたい

主題2 胆:「「胆管癌進展範囲診断のピットフォール」

司会:
入澤 篤志(獨協医科大学医学部 内科学(消化器)講座)
大塚 隆生(鹿児島大学医学部 消化器・乳腺甲状腺外科)
病理コメンテーター:
相島 慎一(佐賀大学医学部 病因病態科学 診断病理学分野)
画像コメンテーター:
小坂 一斗(金沢大学附属病院 放射線科)
 基調講演

「胆管癌進展範囲診断のピットフォール」

(内科)手稲渓仁会病院 消化器病センター 潟沼 朗生

(外科)静岡県立静岡がんセンター 肝胆膵外科 上坂 克彦

 症例検討

1)術前に胆管癌と診断した IgG4 関連硬化性胆管炎の1例
   産業医科大学 第3内科学 大江 晋司

2)広範囲に進展した平坦型胆管癌の1例
   東京医科大学 臨床医学系消化器内科学分野 平川 徳之

3)経口デジタル胆道鏡(SpyGlass DS)が胆管癌の進展度診断に有用であった1例
   近畿大学病院 消化器内科 竹中 完

4)膵側・肝側胆管の追加切除により肝外胆管切除で根治切除が得られた胆管癌の1例
   鹿児島大学医学部 消化器・乳腺甲状腺外科 伊地知 徹也

主題のねらい

胆管癌は胆管上皮から発生する癌腫であり、その治療の基本は外科的切除術である。遠隔転移のない胆管癌の手術適応・術式を考える際に、水平方向と垂直方向の進展をしっかりと診断することは極めて重要である。近年では、さまざまな画像診断法が著しく進歩しており正確な進展度診断に大きく寄与している。また,ERCP 関連手技としての管腔内超音波検査、胆道鏡による直接観察および狙撃生検等も機器の進歩と共に診断能向上がみられている。一方で、胆管癌の水平方向伸展には、表層・壁内・壁外進展といった3つの様式があることからも、全ての症例で的確に進展度診断を行うことは未だ困難といえる。本セッションでは、進展範囲診断に難渋した胆管癌症例を御呈示頂き、診断過程において考慮しておくべきピットフォールについて討論したい。本セッションが、今後の胆道診断学の更なる向上に繋がることを期待する。

主題3 膵:「膵腺房細胞癌 Up To Date」

司会:
菅野 敦(自治医科大学 消化器・肝臓内科)
藤井 努(富山大学 学術研究部医学系 消化器・腫瘍・総合外科 )
病理コメンテーター:
福嶋 敬宜(自治医科大学附属病院 病理診断科)
画像コメンテーター:
吉満 研吾(福岡大学医学部 放射線医学教室)
 基調講演

「膵腺房細胞癌 Up To Date」

東北大学大学院医学系研究科 病態病理学分野 古川 徹

 症例検討

1)主膵管内進展を呈した膵腺房細胞癌の1例
   名古屋大学医学部附属病院 消化器内科 石川 卓哉

2)E副膵管内腔から副乳頭へ進展し十二指腸粘膜下腫瘍様隆起を呈した膵腺房細胞癌の1例
   川崎市立川崎病院 内科 井上 健太郎

3)経時的に縮小と増大を繰り返した膵腺房細胞癌の1切除例
   J飯田病院 外科 藤本 武利

4)FOLFIRINOX 療法が奏功し根治的切除が可能となった BRCA2 遺伝子変異を有する膵腺房細胞癌の1例
   京都大学医学部附属病院 消化器内科 横出 正隆

5)巨大膵腺房細胞癌に対して、新規化学療法が奏功し根治切除し得た1例
   富山大学 学術研究部医学系 消化器・腫瘍・総合外科 渡辺 徹

5)化学療法により長期生存が得られた腺房細胞癌・多発肝転移の1例
   愛知県がんセンター 消化器内科 倉石 康弘

主題のねらい

膵腺房細胞癌は、まれな膵充実性膵腫瘍で、切除例のみならず、超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNA)の普及により病理組織学的に診断される症例が増加している。血液検査にて、膵酵素、特にリパーゼが上昇し、腫瘍マーカーもAFPが上昇することが知られている。画像所見は、類円形の腫瘍を呈するとの報告や、多結節融合の形態を呈する場合など多彩である。しかしながら、膵腺房細胞癌は、極めて稀であり、その臨床病理学的特徴は明らかにされていない。さらに、治療方針に関しても不明であり、特に遠隔転移例や非切除症例に対する化学療法などの治療法は明確にされておらず、全体の臨床像は不明である。本セッションでは、膵腺房細胞癌をテーマに症例を募集する。診断や治療に難渋した示唆に富む興味深い症例の応募を期待する。