膵Perfusion CTとは

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5.Perfusion Parameterの特徴

各アルゴリズムの開発に伴い、さまざまなParameterが算出されるようになった。そこで、本稿では、主だったPerfusion Parameterの意味を整理・概説する。

1.膵血流速度

臓器の血流速度の多くは、質量体積速度(ml/100g/min, etc)や体積速度(ml/min)にて表現される。概念としては、対象組織内の血管内を通過する血流の速さと理解できる。Maximum slope法とDeconvolution法からは、膵血流速度(Pancreatic Blood Flow;PBF)が算出され、概ね算出される値は、アルゴリズムは違うものの、近い値が算出される。一方、Single compartmentKinetic modelからは、FV値が算出され、この値の性格はMaximum slope法やDeconvolution法から求められるPBFに近いものであるが、その平均値は、PBFと比べ高く算出されるようである。Patlack法は、血流速度をInputとOutput(KinputとKoutput)に分けて算出することができるが、過去の報告論文を紐解くと、撮像時間を制限しKinputのみを算出している。このように、限定された解析方法でのPatlakアルゴリズムの計算結果は、原理的にはMaximum slop法により算出されたPBFに近くなると推察されるものの、その精度は不明な点が多く、今後の理解が期待される。

2.膵血流量

膵血流量は、膵血流速度とは別のPerfusion parameterであり、対象組織内の血管の体積にあたる。多くの市販されている解析ソフトに同様の項目を見出すことができる。一部のMaximum slope法を実装しているソフトの場合、解析アルゴリズムからPBFを算出し、1stMoment法におけるMomentと組み合わせることで、PBVを算出している様である。

PBFとPBVの関係は、道路の道幅(PBV)とその中を通過している車の速度(PBF)と捉えるとわかりやすい。(図6)

図6 PBFとPBVの関係

図6
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3.組織通過時間

平均組織通過時間(Mean Transit Time;MTT)は、Perfusion Parameterの概念の中で、古くから存在するもののひとつである。“血液が組織を通過する”ために要する平均時間を計算している。1,28

1st Momentから算出される組織通過時間は、対象組織のTDCからのみ算出される。28 一方、Deconvolution法における組織通過時間は、1st Momentとは別の概念から算出される。Deconvolution法では、MTTは、主に入口(入力血管)を通った造影剤が出口(出力血管)に現れるまでの時間から算出される。Single compartment kinetic modelにおけるtは、少しMTTと性格が異なり、流入血管と対象組織までの造影剤の到達までの時間に近い。(図5)