世話人代表挨拶

壊死性膵炎は急性膵炎の中でも致命率の高い重篤な病態であるが、膵壊死がどの時期に どのように形成されるかについては定説がない。私たちは、急性膵炎の重症例は、活性化 膵酵素による血管内皮傷害や補体活性化が引き金となる播種性血管内凝固症候群(DIC)に 似た病態であり、膵血管内の微小血栓形成による膵血流障害が膵壊死形成の重要な過程と 考えている。このような変化は、急性膵炎発症後12時間から48時間の、通常の造影CTでは 膵実質壊死の形成が明らかでない時期に始まっていると想定している。本邦には、蛋白分 解酵素阻害薬・抗菌薬膵局所動注療法(CRAI)という、膵局所のDIC制御を目指した優れた 治療法がある。将来の膵壊死形成を早期に予測し、少しでも早くCRAIを開始して壊死性膵炎 への進展を防止できないか?これがPerfusion CTに着目したきっかけである。

Perfusion CTは、比較的少量の造影剤をbolus投与後、臓器の同一断面でdynamic CTを撮像し、 特定の解析法によって設定ROI内の臓器血流を各種パラメーターを用いて客観的に評価する方法である。 私たちは、膵壊死形成の早期予測法としてのPerfusion CTの有用性を探るため検討を開始した。 しかし、検討を重ねるに従い、解析法や理論的背景への知識不足、CT機種による計算値のズレ、 撮像法の違いによるデータの差、放射線被爆量への対策など、多くの課題があることも痛感した。 諸問題解決のためには、消化器専門医ばかりでなく、放射線医学の専門家や臨床放射線医、 放射線技師と意見交換を行い、また、より多くの方々に興味をもっていただくために、 さまざまな膵疾患に対象を広げて本診断法の確立を目指す必要性を感じた。

このような状況の中、エーザイ株式会社の支援によって、2010年4月21日、第96回日本消化 器病学会の前日に、新潟にて第1回膵Perfusion CT画像研究会を開催することができた。 また、このたび、Perfusion CTに関する情報交換と、本診断法の普及のために、研究会の ホームページを開設する運びとなった。Perfusion CTについて多くに方々が興味を持ち、 本法が膵疾患の新しい診断法として発展し定着できるよう願っている。

  • 膵Perfusion CT画像研究会
  • 代表世話人
  • 東北大学大学院消化器病態学分野
  • 下瀬川 徹