膵Perfusion CTとは

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2.Perfusion CTとは

1.概念

近年、2-3次元のVolume Dataに時間軸を加えて観察したものを、Time Axis Image (或いはCine image)と呼び、注目を集めている。特に、Time axis imageの中で、対象臓器の時間的な形態変化を観察する場合をMotion CTと呼び、造影剤濃度の時間的な変化を観察し解析したものをPerfusion CT1, 2と呼ぶ。Perfusion CTの実際は、ピクセルごとの時間濃度勾配(Time Density Curve;TDC)を解析アルゴリズムに基づいて解析することでPerfusion dataを作成し、対象実質のPerfusionをカラーマップにて提示する3。

Perfusion CTにおける時間濃度勾配データは、一般に用いられているMDCTやMRI にて取得可能である。また通常の造影剤をトレーサーとして使用することで作成されるので、潜在的に撮像可能施設は多いと考えられる。以上から、Dynamic CTの一つと言うこともできる。

2.膵Perfusion CTへと至る経緯と期待

歴史的な経緯でみると、造影CTにて、時間濃度勾配を作成することは新しいことではない。かつでは、単列CTを用い、同一断面における造影剤動態を経時的に評価していた。しかし、評価できる範囲が単一断面に限られており、SpiralCTが登場した。Spiral CTは、広範な評価範囲を有するが、同一断面を経時的に観察できない。そこで、膵疾患では、動脈相、門脈相などを経験的に設定し、複数回撮像する(DynamicCT)ことで、経時的な造影剤変化を評価してきた。しかし、膵疾患におけるDynamic CTには、いくつかの問題点がある。

例えば、膵疾患では、最も造影剤のコントラストがつく時相が異なることも希ではない。造影剤投与後、1~2回の追加撮像では、最も評価したいコントラストのつく時相を逃してしまい、膵病変の評価は困難な場合もあった。 そこで、造影剤投与後、3~5回と複数回、CT撮像を加え、詳細な造影剤動態を行う方向に進んでいる4, 5。しかし、こういった試みでも、厳密に評価できるかどうかは不明である。

なぜ膵疾患をDynamic CTで評価することが難しいのだろう。その理由として、造影効果の評価が難しいことがあげられる。例えば、膵癌は、造影不良と表現されることが多い。しかし、Cine CTやPerfusion CTを撮像すると明瞭に観察されるが、実際には緩やかに造影される。膵癌が造影不良なのは、周辺膵組織と比べて造影不良なのである。膵実質がよく造影され、かつ、腫瘍がまだ造影されていない相は、コントラストが明瞭となるので観察に適した相といえる。しかし、正常膵と膵癌のコントラストが最も明瞭となる相は、膵正常実質と膵癌の2つの造影効果の無限の組み合わせによって規定され、決して一様ではない。以上から、単一相-少数回数のDynamic CTによる観察では、厳密な評価に限界がある。4 このDynamic CTの限界は、Perfusion CTの導入によって解決されることが期待されている。Perfusion CTは、言うならば30-60相、あるいはそれ以上の相を撮像し、これを解析するからである。