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「第5回膵Perfusion CT画像研究会」一般演題5

6.イヌの膵右葉インスリノーマの一例

東京農工大 獣医放射線科

岸本 海織、小林 正行、樋田 慎司、松田 有梨、伊藤 博

イヌのインスリノーマはヒトのそれとは異なり、90%以上が悪性であり、そのうち半数が手術時には肝・リンパ節転移をしている。そのため早期発見、外科的摘出が必須であるが、イヌ膵はV字型をしており頭尾方向に細長く、全長の超音波検査が困難である。一方でCT検査では膵臓全体の画像を取得することが容易である。しかし膵臓は菲薄かつ脂肪のように形状が一定しない臓器であるために、微小かつ乏血性・臓器境界に腫瘍が存在する場合、CTを用いても検出が困難であることが少なくない。そのため、血流の微細な変化を描出できるPerfusion CTは有用であり、腫瘍ごとの血流パターンの蓄積が急がれる。本研究では、イヌの膵右葉インスリノーマに対しPerfusion CT解析を行い、血流パターンと病理組織の比較を行った。

症例は12歳、雌の柴犬で、血糖値は40~50程度であるが顕著な臨床症状は呈していなかった。しかしAIGRが高値であったためインスリノーマを疑い、CT検査を行ったところ、右葉尾端に約10 mmの腫瘤を検出した。続いてPerfusion CT検査を行った(300 mgI/kg、3.0 ml/s)。CT装置は64列MDCT (Aquilion CXL, TOSHIBA)を用いた。解析アルゴリズムはSingle-input maximum slope methodおよびPatlak methodを用いた。

いずれのアルゴリズムについても正常膵のFlowは過去に報告されたイヌの血流値を逸脱しなかった。血流mapはアルゴリズムにより差が認められたが、概ね腫瘍中心部および辺縁部のFlowはいずれについても正常膵より高値を示し、辺縁部のFlowは中心部のそれよりも高値を示した。外科的摘出後の病理組織学的検査結果は膵島腺癌(インスリノーマ)であった。組織像は、中心部では腫瘍細胞が敷石状に増殖し、辺縁部では血管密度が高く、鬱血像も認められた。

今回のインスリノーマは10mm程度であったが、血流mapは組織情報を比較的忠実に反映した。しかし解析方法や使用するアルゴリズムにより血流値が異なった。現段階では定性評価が限界といえるが、血流パターンの蓄積を行うことで臨床診断への応用が望まれる。

発表スライド