東北大学消化器内科1)、東北大学放射線診断科2)
発表者氏名:廣田衛久1)
共同研究者氏名:下瀬川徹1)、津田雅視2)、松浦智徳2)
慢性膵炎は進行とともに膵機能が低下する難病であるが、終末期には膵外分泌機能不全による栄養障害や膵内分泌機能不全による膵性糖尿病を発症し、生活の質が著しく損なわれる。慢性膵炎の進行に伴い、膵には炎症細胞浸潤、腺房細胞や膵島の脱落、線維化などの組織変化が進行し、膵の血流が変化する。今回我々は、この血流変化が膵機能と相関するのか、Perfusion CTを用いて解析を行った。
CT装置はSiemens社のSomatome Definition、64列MDCTを用いた。Ziosoft社のアプリケーションソフトウェアを用い、Single-compartment kinetic model法により解析した。用いたパラメーターは、FV値、VD値、τ値、R2値の4つ。撮影条件:管電圧120kV、管電流100mA。ローテーションタイムは1秒。造影剤40mLを毎秒5mLで右腕の正中静脈より静注。スキャン時間は40-60秒。ROIの設定は、拡張した主膵管、膵石、嚢胞、血管を除いた膵実質をなるべく広く含めるように設定した。ROIの平均は4.28cm2であった。慢性膵炎患者は23名(男性18名、女性5名)平均年齢52.3歳。膵外分泌機能の指標としてPFD値を用いた。PFD試験を行ったのは18症例で、70%以上が10例、70%未満が8例。糖尿病合併が9例、非合併が14例であった。
PFD値70%以上の慢性膵炎患者では、70%未満の患者に比べ、有意にFV値が高かった(142.8/分 vs 71.84/分、p=0.01)。VD値、τ値、R2値には有意差が無かった。PFD値とFV値は有意な相関関係を認めた(Pearson r=0.6080, n=18, p=0.0074)。糖尿病を合併しない慢性膵炎患者では、糖尿病を合併する患者に比べ、FV値が高い傾向であった(121.4/分 vs 73.11/分、p=0.051)。
膵血流のパラメーターのひとつ、Single-compartment kinetic model法におけるFV値と膵外分泌機能(PFD値)との有意な相関が認められた。