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「第2回膵Perfusion CT画像研究会」一般演題14

14.「Perfusion CTにて指摘し得なかった通常型進行膵癌」

自治医科大学 消化器一般外科  遠藤和洋、佐田尚宏

済生会宇都宮病院外科  篠崎浩治、小林健二、尾形佳郎

背景

膵Perfusion CTは、急性膵炎診断での有用性が示されている。しかしながら腫瘍性病変に関する検討は不十分である。我々は、膵癌を中心に様々な腫瘍性病変にperfusion CTを施行してきた。

今回、perfusion CTにて指摘し得ない進行膵癌を経験したので報告する。

症例

57才女性 特記既往歴なし。閉塞性黄疸にて発症。造影CT検査早期相にて膵頭部に不均一な造影効果の低い腫瘤を認めた。造影MRIでも早期相で同様の所見。腹部超音波検査では、低echo腫瘤であり血流は確認できなかった。

膵perfusion CT

Siemens社製SOMATOM definition ASを用いた。呼吸性変動抑制のために酸素投与を行った。位置決めの後にヨード造影剤50mlを5ml/秒で注入し、その後生理食塩水10mlを注入した。造影剤注入開始7秒後より撮影を開始。撮影パラメーターは、管電圧100kV、管電流150mAs、コリメーション1.2mmx16、撮影回数28回、撮影範囲67mm、撮影時間43秒。解析は、Siemens社VPCT bodyを用いた。病変部および正常部のカラーマップ、time density curve(TDC)を作成し、その結果と切除検体の病理所見と比較検討した。

結果

perfusion CTカラーマップにて、腫瘍の局在は指摘し得なかった。各種潅流パラメーターも、非病変部と比較しても明らかな違いと認めなかった。TDCを比較すると造影パターンは早期に濃染、その後減少してから遷延するパターンであった。これは非病変部と同様であった。切除病理所見では、病変の内部に島状に正常膵組織が残存していた。

考察

これまでに我々が検討した膵癌病変は、perfusion CTにて低灌流腫瘤として描出されていた。病理所見では、病変は均一に癌が存在しており、内部に正常膵は存在しなかった。今回経験した症例では、島状に取り残された膵組織に血流が残存していたものと考えられた。関心領域の設定によりこの領域の血流を計算することから、TDCが同一パターンを示して同様な潅流結果となったと考えられる。このような膵癌もあることを念頭に置いた上で診療に当たる必要がある。さらに、このような病変の特徴は何らかな生物学的な振る舞いの差を示している可能性があるため今後の検討が必要である。

スライド14
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