1)東北大学消化器内科、2)東北大学放射線科
廣田衛久 1)、津田雅視 2)、下瀬川徹 1)
Perfusion CTは、関心領域における血液還流速度(Perfusion)やBlood volumeなどを解析する手法である。この手法により通常の造影CT以上に組織の血管構築を反映し、血流動態が強調された画像を作成する事が可能となる。本研究の目的は、自己免疫性膵炎と膵癌の鑑別におけるPerfusion CTの有用性を検討することである。
使用機器:Siemens社製のSomatome Definition、64列MDCT。解析法:One Compartment法によるFV値(pancreatic volumetric blood flow)、VD値(pancreatic volume of distribution)、τ値(blood transit time)を比較した。撮影法:造影剤注入量40mL、注入速度5mL/秒。ローテーションタイム1秒。スライス厚7.2mm。原則として右正中静脈に20G針でラインを確保し、造影剤を注入した。スキャン時間は40秒から60秒とした。対象患者:膵癌(浸潤性膵管癌)23症例(男性14名、女性9名、平均年齢65.1歳)、腫瘍の占拠部位は、頭部10例、体部5例、尾部8例。自己免疫性膵炎(LPSP)12症例(男性11名、女性1名、平均年齢68.3歳)。全例1型AIP。
膵癌23症例の病変部のFV値は平均20.7/min、それに対しAIP12症例のFV値は平均81.3/minと膵癌に比較し有意に高値であった(p<0.0001)。膵癌症例のVD値は平均90.0に対し、AIP症例のVD値は平均28.8と有意に低値であった(p=0.0459)。膵癌症例のτ値は平均-3.256秒に対しAIP症例のτ値は平均-0.720秒と低値であったが統計学的に有意差を認めなかった。
膵癌では血液還流速度(FV値)が極端に遅く、明瞭に自己免疫性膵炎と鑑別することができた。Perfusion CTは両者の鑑別に有用である。