京都府立医科大学 消化器内科
発表者:阪上 順一(さかがみ じゅんいち)
共同研究者:保田宏明、十亀義生、内藤裕二、片岡慶正、吉川敏一
急性膵炎発症時における膵虚血の判定に膵Perfusion CTの有用性が報告されている。急性膵炎の多くは正常膵に発症すると考えられるが、厚労省急性膵炎全国調査(2007)によると慢性膵炎に続発する急性膵炎は4.8%に存在する。
慢性膵炎急性増悪におけるPerfusion CT・膵虚血の判定に苦慮した代表例3例を提示する。
当院における膵Perfusion CTはPhilips社のBrilliance 64を用い下記の設定で息止めなしで撮像している(IRB通過)。Voltage : 120 Kv、mAs : 100 mAs、Collimation : 32 x 1.25 (5 mm x 8 slice)、Slice thickness : 5 mm、Slice increment : 0 mm、Rotation time : 0.4 sec、Cycle time : 2.0 sec、Filter : B、Scan time : 60 sec。健常成人の膵実質のPerfusion値は60~70ml/min/100ml(以下単位を略す)が多い。
36歳男性。アルコール性慢性石灰化膵炎の急性増悪で膵頭部の虚血を疑い、Perfusion CTを撮影した。膵頭部のPerfusion値は14.6±4.9であったが、膵石が近傍スライスにあると異なった数値が得られた(例;110.7)。
58歳男性。急性膵炎発症時のPerfusion値は15.0±2.5、軽快後は18.6±1.2。後の検索で特発性早期慢性膵炎と診断された。
57歳女性。アルコール性慢性石灰化膵炎の急性増悪。膵頭部にRVS下ソナゾイド造影USでバブルの流入のない無血領域を認めたが、同部位のPerfusion値は7.7±1.7であった。
代表的なスライド
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RVS-CEUSでは無血領域であるが、Perfusion値=7.7 ml/min/100mlと数値化された
無血領域近傍の虚血域を疑うが膵石近傍であるため、やや高い(Perfusion値=21.4 ml/min/100ml)を呈していると思われた。
慢性膵炎の通常灌流域はPerfusion値が低い症例もあるため、虚血域かどうかの判定に苦慮した。(Perfusion値=13.4 ml/min/100ml)
慢性膵炎におけるPerfusion CTでは以下の点に留意すべきと考えた。1.膵石近傍にROIをとると異常値を呈する。2.通常灌流域と虚血域のPerfusion値の幅が狭い。3.無血領域でもPerfusion値が数値化される。