1)倉敷中央病院消化器内科、2)倉敷中央病院放射線科、
3)Mayo Clinic Department of Gastroenterology and Hepatology
吉田 司 1)、小原 佳子 1)、菊池 理 1)、石田 悦嗣 1)、松枝 和宏 1)、山本 博 1)、渡邊 祐司 2)、辻 喜久 3)
重症急性膵炎、特に壊死性膵炎は致命率が高い一方で早期に虚血を診断し、膵持続局所動注療法(CRAI)をはじめとした適切な治療にて救命率を高められる可能性が指摘されている。我々は膵perfusion CTを利用することで虚血の早期発見に努めているが、発症後どの時点で膵perfusion CTが膵虚血を検出できるかは明らかではない。今回、発症4時間の時点ではperfusion CTで虚血を検出できなかったが、12時間後にperfusion CTを再検し虚血を判定し得た重症急性膵炎の症例を経験したため報告する。
生来健康な33歳男性。発症当日朝6時に激烈な心窩部痛にて目覚め、改善ないために朝9時に当院救急受診。発症4時間時点での評価で、厚生労働省の重症度判定基準(新基準)スコアにて0点の軽症、造影CT、perfusion CTで虚血は認められず。しかし疼痛が非常に強かったため、発症12時間時点で再評価したところ、重症度判定基準スコアでは1点であったものの造影CT、perfusion CTにて膵頭部~体部にかけて明らかな血流低下を認めたためICU入室、CRAIを開始。Day3の造影CTにて膵頭部~体部は壊死に陥っており、壊死性膵炎から多臓器不全に陥るも集中治療にて改善し、day33に独歩での退院を得た。Perfusion CTでの虚血部はDay3での膵壊死部によく一致した。また、Time Density Curve(TDC)を用いた後ろ向きの検討では、発症4時間の時点でも膵の一部に血流低下を認めていた。
本症例において、発症12時間で重症化と壊死を予測できている一方、発症4時間後では壊死を予測することは困難であり、繰り返しのperfusion CTが必要となる場合がある。一方でperfusion CT画像にTDCを併用することで、発症数時間での早期に虚血を判定できる可能性があると考えられた。