1)京都大学医学部付属病院 放射線治療科、2)京都大学医学部付属病院 消化器内科
3)Gastroenterology and Hepatology Pancreas Research Group, Mayo Clinic、
4)Department of Radiology, Mayo Clinic、5)京都大学医学部付属病院 放射線診断科
発表者名:渡邉 翼 1)
共同研究者名:辻 喜久2)3)、Naoki Takahashi 4)、磯田裕義 5)、児玉裕三 2)、千葉 勉 2)
maximum slope法、deconvolution法と同様に、single-compartment model は血流解析アルゴリズムの一つである。本モデルの主なパラメータはFV(血流量)・f(膵臓の体積のうち血管系の体積割合)・τ(大動脈から膵臓への平均移動時間)・R2(実測TDCとモデルTDCの差異を最小二乗法により定量化した値)で、膵実質へ流入する造影剤についての質量保存則を利用して値を算出する。本モデルは正常膵臓・膵内分泌腫瘍などへ応用した報告がある一方で炎症を有する実質臓器へ応用できるかは未知数である。今回我々は本モデルをが重症急性膵炎に応用できるかどうかを検討した。
2004年から2008年までの間、発症3日以内にPerfusion CTを撮像した49人の重症急性膵炎患者を対象に本モデルと膵壊死・多臓器不全の発生との関係を検討した。膵壊死は3週間後の造影CTにて、多臓器不全は発症2週間以内の発生をAtlanta symposiumの基準に則り解析対象とした。造影剤イオメロン350を毎秒4ml, 約10秒間で投与し、80-120kV, 45-60mAs, 1.5秒/回転, 54秒間の条件で撮像した。
49人の膵炎患者のうち膵壊死に至った症例は13例、多臓器不全に至った症例は9例で、本モデルのパラメータすべてが有意に発症3週間後の膵壊死を予測でき、またτのみで多臓器不全とも有意な差を示した。補足として本モデルと血管透過性と関連する血清Angiopoietin-2値の関係を11人の急性膵炎患者保存血清を用いて検討したところAngiopoietin-2とτのみで有意な相関がみられた。
本モデルは膵炎にも応用可能でありさらにτは多臓器不全も予測することができた。τは血管透過性亢進の病態を反映する可能性も示唆され、本モデルを用いた血流解析の有用性を示すものと考える。