1)東京農工大学 農学部 獣医学科、
2)Gastroenterology and Hepatology Pancreas Research Group, Mayo Clinic、
3)とがさき動物病院・埼玉、4)北野病院消化器内科、5)京都大学消化器内科、
6)帯広畜産大学 畜産学部 獣医学科・北海道
岸本海織 1)、辻喜久 2)、方波見奈々 3)、八隅秀二郎 4)、千葉勉 5)、山田一孝 6)
重症急性膵炎の予後は未だ不良である。予後の改善を困難にしている原因として、急性膵炎の早期重症化予測が困難で、集中的治療の開始が遅れることが挙げられる。そこで、脳虚血性疾患に用いられているPerfusion CTを応用し、膵血流低下の早期診断、壊死化予測により、予後予測を行う試みが大きな注目を浴びている。解析アルゴリズムであるmaximum slope法は造影剤投与速度が10.0 ml/s以上と速く、重篤な病態に応用し難い。一方deconvolution法の造影剤投与速度はmaximum slope法の半分以下であり、臨床的に応用しやすい。しかしdeconvolution法は、脳組織のように血管外への造影剤の漏出が無いことを仮定しており、膵臓で血流解析法として成立するかどうかは不明である。そこでイヌを用い、deconvolution法とmaximum slope法による解析値と比較することで膵Perfusion CTにおけるdeconvolution解析が成立するか検討した。
対象:ビーグル犬9頭。iohexol(200 mgI/kg)を5.0 ml/sで急速静注し、同時に30秒間のdynamic scanを行った。解析には市販の脳血流解析ソフトウェア(CBP study, 東芝)を使用した。deconvolution法の解析には流入出血管を、maximum slope法は流入血管を選択する必要がある。膵への流入出血管を腹腔動脈、脾動脈、上腸管膜動脈、門脈、下大静脈に設定し、組み合わせの違いによる計測値の比較も行った。本研究は帯広畜産大学動物実験倫理委員会の承認を得た。
脾動脈を流入血管に、門脈を流出血管に設定した時、deconvolution法の膵血流(43.1±14.8 ml/100 g/min)はmaximum slope法(44.4±15.5 ml/100g/min)と有意に相関した(r=0.84, p<0.01)。造影剤は膵前後で91%が回収され、他の側副血行路は確認されなかったことから実質での漏出量は10%以下であると考えられた。
膵臓から近位の動静脈を解析に使用することで、膵臓においても血流解析が行える可能性が示唆された。